なぜ歯科で一件もクラスターが発生しないのか?

吉村大阪府知事がツイッターで大阪に5500の歯科医院があるがクラスター発生がゼロ。感染対策の賜物であるが、何かある とつぶやいていました。大阪府のみならず全国でも歯科医院でのクラスターはゼロです。

 

総合病院や介護施設等で多くのクラスターが発生する中、なぜ歯科医院ではクラスターが発生しないのか?その理由はなんでしょうか?

大阪府が調査をはじめるようです。

yoshimura

歯科は感染リスクが高い?

「歯科受診すると院内感染してしまいそうで不安です」 「歯科治療は不要不急なのかよくわからない」という国民の皆様のお声があります。

こうしたお話が広まったのは、2020年3月頃に、「歯科医院が新型コロナウィルスの感染リスクが非常に高い」という国内報道がいくつもなされたことによると思われます。報道の多くは、2020年3月15日に報じられたアメリカの新聞・ニューヨークタイムズ紙の記事(下記外部リンク参照)を引用元にしています。

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この図は様々な職業の人たちが、どれくらいコロナ感染のリスクが高いのかを示したとされています。

●図の横軸仕事中の他人との近接距離 (Physical proximity to others)」を示しています。

歯科医師は当然のことながら、診療中は患者さんときわめて近い距離にいますので、図の右端に位置することになります。

●縦軸は「病気や感染症への暴露の度合い (Exposure to diseases)」を示しています。病気や感染症の種類についてはどんなものかは制限していません。虫歯や歯周病の患者も、コロナ感染患者も一緒くたで「病気や感染症」ということです。下の方から「なし」「25;1年に1回以上」「50;月に1回以上」「75;週に1回以上」「100;毎日」となっています。歯科医師は日々患者さん(虫歯や歯周病などの歯科疾患)を診ているわけですから、当然「毎日」になります。そうすると図の一番上に位置することになります。

 

●結果、図のいちばん右上に歯科医師(Dentist)が位置しています。これにより「歯科医師は大変感染リスクの高い職業である」というふうに読めてしまうのです。

しかしこの図から「歯科医師は新型コロナウィルスへの感染リスクが大変高い」「歯科への通院は感染リスクが高い」と考えるのは明らかに間違っています

この図は仮説にすぎない

この図・記事自体は、エビデンスのある科学論文や、実際の感染データの引用等ではなく、ニューヨークタイムズ紙で独自に作成したものであり、「(病気の種類を問わず)患者に毎日接し、その距離が近い職業ほど感染のリスクが高いはず」という単なる仮説を図にしただけのものです。歯科医師が実際に新型コロナウイルスに多く感染したことを図にしたわけではないのです。

実際の感染状況は?

では実際はどうでしょうか?2020年4月30日 日本歯科医師会にて 「歯科治療を通じて新型コロナウィルスの感染の報告は1件もなかった」という事実(歯科医院側から患者様側へのコロナウィルス感染はなし)が報告されています。

また、他業種と比較して、世界的にも国内的にも、歯科医師や歯科衛生士、歯科通院の患者が有意に多く感染したというデータや論文も全く見られません。むしろ、前述のように、病院等でクラスターが発生する中、なぜ歯科医院は1件もクラスターが発生しないのか、その謎を探るべく逆に調査が開始されています。

なぜ仮説が間違っていたのか?

では、なぜ「患者に毎日接し、その距離が近い職業ほど感染のリスクが高い」というニューヨークタイムズ紙の仮説が、結果的に誤っていたのでしょうか?感染症にかかるリスクとして、「患者との距離が近く・接触頻度が高い」ことは、確かに無理な仮説ではありません。

しかし、この仮説には「感染予防対策を十分おこなっているか否か」という要素がすっぽり抜け落ちてしまっているのです。感染予防対策をせずに、患者と近く、接触頻度が高ければ、もちろん感染リスクは上昇するでしょう(歯科医療従事者のみでなくすべての医療関係者にいえます)。 しかし、歯科では新型コロナ感染拡大の以前より、HIV(エイズウイルス)HBV(B型肝炎ウイルス)等に対する感染対策は「当たり前」のこととして万全にとられていました。

標準予防策とは?

基本的な感染予防対策は、標準予防策(スタンダードプレコーションStandard Precautions)と呼ばれ、米国疾病管理予防センター(CDC)が推奨している病院感染対策の基本的な方法です。あらゆる人の血液、すべての体液、汗以外の分泌物、排泄物、損傷のある皮膚、および粘膜には感染性があると考えて取り扱うという考え方を基盤に、すべての人に実施する感染予防策です。

〇使用する器具の厳重な洗浄・消毒・滅菌管理 〇フェイスガード・防護ガウン等の個人防護具の使用 〇使い捨てマスク・グローブの着用 〇口腔外バキュームの使用 〇頻回の手指消毒 等々、新型コロナ感染以前より、「当たり前のこと」として感染対策を行っているのです。

もちろん標準予防策でも、100%新型コロナウィルスの感染が防げるという証拠にはなりません。しかし、ニューヨークタイムズ紙の仮説のように、歯科医師や歯科衛生士が最もリスクの高い職業であれば、明らかに日本でも歯科医療従事者の多くが感染しているということになるはずですが、前述のとおり実際は全く異なります。

この結果は、日本の歯科医院の感染対策(標準予防策)が十分機能していることの、なによりの証拠といえるのではないでしょうか?

当院の万全の滅菌設備

さらに当院は感染対策に特に力を入れており、下記のような他の歯科医院にはあまりない設備・体制にて、新型コロナ感染拡大以前より標準予防策以上の徹底した感染予防対策をおこなっております。

〇院内全体のセントラル滅菌システム ポセイドン

〇国際規格に準拠した医療用の高圧洗浄機、ドイツ ミーレ社のジェットウォッシャー

〇ハンドピース専用滅菌機

〇ガス滅菌器

〇強酸水 生成器

〇低濃度オゾン発生装置

安心してご来院ください

ニューヨークタイムズ紙の報道や、それを引用とした国内報道がきっかけとなって、歯科医院は感染リスクが高い危険な場所という誤解がすすみ、受診を控えるような空気があるのは大変問題です。

フェイクニュースとまでは言いませんが、前述のとおりニューヨークタイムズ紙の2020年3月の報道は、あくまで一仮説であり、対象がすべての病気としていてあいまいなことと、標準予防策等を考慮していなかった点で、大きく現実(2021年1月)とずれています。

間違っていたとはいえ、一度ついてしまった「イメージ」を覆すことはなかなか難しいのですが、本ページを読んでくださった方には標準予防策を上回る感染予防対策をしっかり行っている当院のような歯科医院への受診は安全だとご理解いただけますと幸いです。