特徴4 再生医療

再生医療の分野は日進月歩で進化してます。当科では

人体にとっての「異物」をなるべく使用せずに安心・安全かつ患者様への負担を最小限に

とのコンセプトで歯科領域での最先端の再生医療&インプラント治療にとりくんでいます。

骨になる「材料」 CGF & βTCP

①完全自己血由来フィブリンゲル CGF

インプラント予定部位に骨を増やす必要がある場合、骨になる「材料」として、以前は生体にとって「異物」を含む材料を使うのが主流で、感染のリスクが少なからずある、もしくは添加物を混入しなくてはいけないといった問題点があります。

そこで当科では添加物等を一切使用しない、完全自己血液由来のフィブリンゲル(CGF)を作る機器を導入しました。県内での導入はまだほんの少数ですが、インプラントを多く手掛けている歯科医院では、スタンダードな方法となりつつあります。

 

◆CGF(concentrated growth factor) とは・・・

CGFとは、成長因子が豊富に含まれた、完全自己血液由来のフィブリンゲルです。添加物を一切用いないので、感染リスクが低減されます。次世代の血小板濃縮フィブリン製剤として、歯科に限らず多くの再生医療分野で応用されています。

完全自己血由来フィブリンゲル(CGF) 作成の流れ

1.遠心分離機
遠心分離機

専用の遠心分離機を使用します。導入している歯科は県内でまだわずかです。

2.採血
採血

まずは、ほんの少量採血させていただきます。

3.作成開始
作成開始

遠心分離機にセットし、約13分で完成します。

4.完成
完成

血液が、
①最上部の上澄み液
②上部の黄色のゲル
③下部の赤血球
の3層にきれいに分離されます。

5.CGF
完全自己血由来フィブリンゲル(CGF)

上部のゲルを分離します。これが完全自己血由来フィブリンゲル(CGF)です。傷を治す・骨を作る成分がたくさん含まれているため、痛みを抑えて治りも早くします。

6.ゲル状の骨移植材
ゲル状の骨移植材

最上部の上澄み液は、トロンビンと呼ばれる成分で、これに骨の材料(骨補填材)を混ぜると、ゲル状になり、操作しやすい骨の材料となります。

7.手術
手術

上あごで骨が少ない場合、水圧で上顎洞の粘膜を押し上げます。(ソケットリフト)

8.ゲルの使用
ゲルの使用

押し上げられたスペースに、自己血由来フィブリンゲルを挿入します。異物でないため、とても安心です。ゲルは数か月後、自然に骨になっていきます。

9.インプラント埋入
インプラント埋入

ゲルによりかさ増しされたスペースにインプラントを埋入します。

◆フィブリン とは・・・

フィブリンとは・・・CGFとは、成長因子が豊富に含まれた、完全自己血液由来のフィブリンゲルです。添加物を一切用いないので、感染リスクが低減されます。次世代の血小板濃縮フィブリン製剤として、歯科に限らず多くの再生医療分野で応用されています。

フィブリンとは・・・からだには、血管の破れをふさぎ血を止める働きがあります。まず、血管の破れた部位に血液中の血小板と呼ばれる血球が集まってきて、穴をふさぎます。これが一次止血で、血小板のフタ(血栓)が作られます。(いわゆる かさぶた ができ始めます。)

フィブリンとは・・・次に、血小板のフタの上で二次止血が始まります。二次止血では、フィブリンが網目状のガッチリした膜を作り、血小板のフタを固めます。これにより、大きな血管の破れにも耐えられるフタができることになります。(傷口むきだしでヒリヒリしていた部位も、成熟したかさぶた がしっかりと傷口をガードしてくれると痛みが治まりますね。そのイメージに近いです。)

二次止血が完了し出血がおさまると、その後はどんどん元のからだへ修復する作用が働いていきます。

②βTCP(β-リン酸三カルシウム:骨補填材)

インプラント治療で骨の量が少ない場合、上述のCGF以外にも骨の「材料」となる骨補填材を使うことがあります。骨補填材と言っても種類がいくつもあります。

自家骨 自分の骨。最も安全で骨が出来やすいが、採取する必要がある。
異種骨 主に牛骨。生体親和性に高い脱タンパク牛骨ミネラルで、欧米ではポピュラーな材料。日本でも一部認可。
同種骨 アメリカの組織銀行から入手する遺体から採取した骨。感染の心配は無いようですが、日本では未認可。
人工骨 ハイドロキシ・アパタイトやβーTCPなど化学合成されたもので、日本でも認可・販売されている。

人工骨最も臨床成績が良く安全で、かつ骨が出来やすいのは自家骨だと思います。しかし、自家骨を使うためには、他の部位から骨を採取してこなければならないため、患者さんの負担も増えます。

そのため、当科では主に人工骨(βTCP)とCGFを混ぜ合わせたものを使っております。

人工骨これまでの人工骨は、移植後も長期に渡り体内に異物として残留するのに対してβ-TCP(β-リン酸三カルシウム)は移植後に自分の骨として吸収され置き換わるリモデリング(※1)の機能を最大の特徴としております。
β-TCPは、CGFと一体化したゲル状で使用できるため、自家骨移植の必要をなくす、あるいは最小限にすることができます。この結果、患者様への外科的な追加処置がなくなり、患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上が期待されます。

(※1)リモデリング とは・・・

骨本来の組織・構造が再形成される機能を言います。β-TCP(β-リン酸三カルシウム)は、リモデリングとともに吸収され自家骨(自分の骨)に置換されます。骨本来の構造の再生が進行することにより骨補填部の機械的性質も骨本来のものに近づきます。また、生体適合性が高く、優れた骨伝導能(骨を呼び込み、骨形成を促進する性質)と吸収性を併せ持っています。

上あごの骨を増やす「技術」

○何らかの原因で歯を抜いて、長期間の経過で骨が少なくなった

○入れ歯をいれていたため、骨がやせてしまった

○歯が膿んでいて、周りの骨が大きく溶けてしまっている

○上顎洞(副鼻腔)が張りだしていて、上あごの奥歯の部分の骨がもともと少ない

上記のようなケースで、必要な骨の幅や高さが不足している場合、今まではインプラント治療が行えず、入れ歯やブリッジでしか歯が抜けた場所を補えませんでした。

しかし当科では、骨造成術&骨移植術により、上あごの骨が不足している方でもインプラント治療が可能となっております。

上あごで骨が足らない場合 ソケットリフト

上あごの骨は下あごに比べて軟らかいので、歯が抜けると急速に骨の吸収をおこし、骨の量が減っていきます。そして、インプラント治療の際にはほとんどの症例において骨が足りなくなっています。このような場合、上あごの奥にある上顎洞という空洞を利用する工夫が必要となります。当科では患者様への負担を最小限に上顎洞の底に骨を造成する「上顎洞挙上術(ソケットリフト)」を行っています。

ソケットリフト

■ソケットリフトとは

ソケットリフト1

骨が吸収して、上顎洞までの距離がありません。このままではインプラントが埋入できないため、上顎洞拳上術(ソケットリフト)が必要です。

ソケットリフト2

インプラントの埋入予定部位の骨に穴を開け、水による圧力によって上顎洞にある粘膜を慎重に押し上げ、骨の代わりとなる材料を入れて骨の量をかさ増します。

ソケットリフト3

ボリュームアップした骨にインプラントを埋入します。骨の代わりとなる材料は約6か月後、本物の骨に置き換わります。

ソケットリフトは、従来の方法と比べて傷口が小さくて済むので、痛みや腫れが少なく、手術時間も短い、体への負担が少ない方法と言えます。上あごの骨がわずか5mm以下でも、水圧を使うテクニックやCGFを応用すればほぼすべての症例で可能となっています。

ソケットリフト専用キット ~CAS KIT~

CAS KIT当科では、より安全に「ソケットリフト」がおこなえる、「CAS KIT」を導入しております。

薄くなった骨のすぐ上にある、わずか1mm程度の上顎洞の粘膜を傷つけずに安全に拳上するための専用器材です。

例えば、約3mmほどの上あごの骨の厚みでは、ドリルで穴をあけるときに少し力が入ってしまうと簡単に粘膜を貫通してしまいます。

そこで、「CAS KIT」ではドリルに1mmごとの専用のストッパーがついており、慎重に確認しながら骨の処置が行えます。

また、ドリル自体の形も独特で、削った骨がドリルの先端に集まるようになっており、骨の削りかすでやさしく粘膜を押し上げてくれます。

さらに、専用のチューブにより、生理食塩水を上顎洞の粘膜内に注入し、水圧によりソフトに粘膜を拳上します。

CAS KIT

骨が吸収して、上顎洞までの距離がありません。このままではインプラントが埋入できないため、上顎洞拳上術(ソケットリフト)が必要です。

CAS KIT

インプラントの埋入予定部位の骨に穴を開け、水による圧力によって上顎洞にある粘膜を慎重に押し上げ、骨の代わりとなる材料を入れて骨の量をかさ増します。

CAS KIT

ボリュームアップした骨にインプラントを埋入します。骨の代わりとなる材料は約6か月後、本物の骨に置き換わります。

超音波ピエゾ機器を利用したソケットリフト

超音波ピエゾ機器

超音波ピエゾ機器(Surgy bone)とは

インプラント手術などで骨を切削する処置の場合、通常は専用のドリルを使用しますが、ドリル切削では、振動や音による不快感を患者様に与える等の欠点があります。それらの問題を解決したのが、イタリア製の「超音波ピエゾ機器」です。

三次元超音波振動を利用するためドリルの振動や音による不快感を患者様に与えることがなくなり、傷を少なく抑えられ、安全な手術が可能になりました。また、バー・ノミ等の従来方法に比べ骨へのダメージも少ないため治りも早くなります。また、骨を削る部分の長さ・深さを正確に調整でき、精密な処置を行うことができます。

さらに、超音波振動には、軟組織にはダメージを与えず、骨(硬組織)にのみ反応するという特性があり、神経・血管・粘膜などの軟組織に損傷を与えず、安全に骨のみを処置することが可能になります。

超音波ピエゾ機器の導入により、骨を対象とする処置の安全性を劇的に高めます。

ソケットリフト
超音波チップ超音波ピエゾ機器を利用したソケットリフト

超音波ピエゾ機器の独特の微細振動は、骨などの硬組織には力が作用しますが粘膜などの軟組織には作用しません。

そして、インプラント手術における上顎洞の挙上術でも、薄くなっている骨(硬組織)を削りながらも、すぐ近くにある上顎洞の粘膜は傷つけずに盛り上げる必要があります。

つまり、超音波ピエゾ機器は上顎洞拳上に有利な手術機器といえます。

2002年、アジア太平洋地域に初めて超音波ピエゾ機器を紹介したDr Dong-Seok Sohnらは、微細振動により上顎洞底の骨(硬組織)を削除しながら、先端より生理食塩水を水圧で噴射する専用チップ開発し、上顎洞底の粘膜(軟組織)を安全にを挙上するという手法を開発しました。当科ドクターはDr Dong-Seok Sohnに直接お会いし、技術を習得しております。PISEの手順は、

①まず、粘膜を傷つけることなく上顎洞底の骨のみを専用チップで切削します。

②次に、10秒ほど上顎洞の粘膜に生理食塩水を内部注水し、強い水圧で上顎洞粘膜を挙上していきます。

③続いて、押し広げられた粘膜のスペースにCGFなどの骨の材料を入れていきます。

④その後インプラントを埋入します。

非常にシンプルで患者様にに負担のない術式です。

当科では、前述のCAS KITや後述のCGFと併用することで、患者様の負担を最小限に抑えた安全な上顎洞拳上術(ソケットリフト)を行っております。

下あごの骨を増やす「技術」

下あごの骨が吸収して痩せると、「下顎管」とよばれる下あご内部の神経・血管の管までの距離が短くなります。極端に痩せてしまうと、入れ歯で押されるだけで神経が圧迫されて痛みを生じることもあります。

下あごの骨を増やす「技術」

下あごで骨が痩せた場合、インプラント治療を行うために「リッジエキスパンジョン」という骨造成術を行います。「リッジ」とは「歯槽堤」という意味で、歯がなくなったあとの骨が痩せてとがった歯ぐきの骨のことです。「エキスパンジョン」とは「増大・拡大」という意味で、とがった骨を広げるという意味です。よって、日本語では「歯槽堤増大術」とよばれることもあります。

痩せた骨には「歯槽堤増大術」(リッジエキスパンジョン)

リッジエキスパンジョン

痩せてとがった骨を ていねいに拡大します

歯ぐきの骨の幅が4mmに満たない場合におこなう処置です。極端に薄くなった骨を分割して、その隙間にインプラントを埋入する方法ですが、非常に割れやすくなっている歯槽骨を破折してしまわないように細心の注意を払う必要があり、高度な技術が求められる治療法です。

当科では、超音波ピエゾ機器完全自己血由来フィブリンゲル(CGF)を併用することで、より安心・安全な歯槽堤増大術が可能となっております。

リッジエキスパンジョン

専用のキットを導入しています

一度に分割するのではなく、状態を確認しながら慎重に骨を広げて行きます。

分割した隙間にインプラントを埋入します。
そのままでは骨量が不足していますので、インプラントを支えるのに充分な骨量を作るため、完全自己血由来フィブリンゲル(CGF)などの骨の材料(骨補填材)を詰め込んで縫合します。

4ヵ月程度で骨が増加し、インプラントがしっかりと固定されます。

当科では骨を拡大する際には、前述の超音波ピエゾ機器を使用しております。これまでは、骨ノミをハンマー(金づち)で激しく叩いて骨を分割していたため、患者様にはハンマーで叩く際に出る音と振動がかなりの恐怖となっていました。ピエゾを導入することにより、超音波振動で歯石を取るような感覚で安全に骨を分割が可能になり、患者様の精神的・肉体的負担を軽減出来るようになりました。

(主に下あごに使う技術ですが、上あごの処置で応用することもあります。)

①骨が痩せています
リッジエキスパンジョン

①骨が痩せてとがっており、このままではインプラントが入りません。細めの器具を歯槽頂部より埋め込んでいきます。

②骨の幅を拡げます
リッジエキスパンジョン

②段々と太めの器具に変え、慎重に骨を押し拡げていきます。ここで超音波ピエゾ機器も併用し、不快感を軽減します。

③骨を無駄にしません
リッジエキスパンジョン

③押し拡げることにより、骨を減らさずにインプラントを埋入できる骨の幅が確保できました。余った隙間にはCGFを入れます。

再生医療は日進月歩

当科では、 日本再生医療学会に所属するとともに、海外も含めて常に最新の再生医療動向にアンテナを張って情報収集を行っています。

 ※一世代前の「PRP(Platelet Rich Plasma)」で使用していた抗凝固剤・トロンビン・CaCl2等の添加物を一切使用しない「CGF」が、現在の最先端の骨に代わる安心・安全な材料です。

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