インプラントのアフターケアについて
長期間の治療 お疲れ様でした
インプラント手術から始まり、インプラント完成まで、長期間の治療、本当にお疲れ様でした。今後は、以下の点に注意して、インプラントとお口の健康をいっしょに保つように致しましょう。
必ず定められた定期検診やメンテナンスに御来院下さい
インプラントは、美術館にそっと置いてある「きれいな美術品」ではなく、食事のたびに毎日とても強い咬む力が三次元的にかかります。家に例えると、毎日震度3~5の地震に耐えているようなものです。また、メンテナンスが不十分だと、食べかすが細菌のえさとなり、細菌がインプラント周囲に繁殖(感染)することもあります。
そういったトラブルを防止するために、完成で「終わり」ではなく、天然歯と同じくらいかそれ以上のメンテナンス(歯磨き・歯間ブラシ等)が大切となります。当院では、個々の患者様の状態に合わせて、できるまで・できる方法をともに模索しながら、衛生士とメンテナンスの指導をさせていただいております。
例えば車を購入した場合でも、いつまで使用できるかはその後のメンテナンス次第ですよね。車検も通さず、オイル交換やタイヤの空気圧の点検もしないで乗り続けたら、いつか重大な事故につながるのは想像に難くありません。
インプラントによる新しい歯を長く持たせるのも、徹底した自己管理だけでなく、歯科医師や衛生士によるプロフェッショナルクリーニング(口腔清掃、歯石除去、表面研磨)や、咬合調整・エックス線撮影などの定期検診を欠かすことはできません。
当院では、インプラント完成後、個々の患者様ののメンテナンス・清掃状態・かみ合わせ等によって異なりますが、すくなくとも6ヶ月に1度の定期検診を行います。(手術前の契約書でもご確認いただいております。)当院ではインプラント治療に3年間の保障期間を設けておりますが、1年以上メンテナンスを怠った場合や、何らかの異常があった場合に長期間放置していた場合には保障の対象外とさせていただくこともありますので、定期健診は欠かさないようにお願い申し上げます。
このような症状があればすぐにご連絡ください
当然ですが、食事をしない日はありません。上記の通り、食事のたびにインプラントにはとても強い咬む力が毎日かかります。また、メンテナンスを十分行っているつもりでも、油断するとプラーク(歯垢・細菌のかたまり)がこびりつきます。それに伴い、下記のような症状がおこることがあります。その場合は、放置せずにすぐにご連絡ください。
インプラント完成後の「出血・腫れ・膿み・臭い」
インプラント治療から一定期間経過後に出血や腫れ、膿み・悪臭などの症状が見られる場合は、インプラント周囲炎が疑われます。インプラント周囲炎とは、プラーク(歯垢)が原因となって起きる「インプラントの歯周病」のこと。
毎日のブラッシングが不十分だったり、定期的に歯科医院でメインテナンスを受けていなかったりすると、口腔内に歯周病菌が増殖し、インプラントを支えている歯ぐきや骨に感染してインプラント周囲炎を発症します。
インプラント周囲炎は歯周病に比べて進行が早いので、最悪の場合、インプラントを抜かざるを得ません。出血や腫れ、膿みなどの症状に気付いたら、放置せずに早急に受診しましょう。
インプラント完成後に「カタつく・グラつく」
インプラントと人工歯(上部構造・かぶせ物)は小さなネジで連結されています。食事のたびのとても強い咬む力と、三次元的に複雑な動きをするかみ合わせの影響で、この連結するねじに緩みが生じて人工歯(上部構造・かぶせ物)がグラグラ・カタカタしてくる場合があります。
かみ合わせは患者様お一人おひとり個人差も大きく、標準的なかみ合わせの調整後でも、そういった症状がでることもありますので、セット後しばらくは経過観察が必要となります。
また、このカタツキは、過剰な強い力がインプラントやあごの骨自体にかかり続けないよう、力を逃がす緩衝材・クッションとしての役割もあります。連結するねじが緩み、人工歯が揺れることで、かみ合わせ等に問題を教えてくれるサインでもあるのです。人工歯のカタツキ自体は、インプラント完成後の症状として、それほど珍しいことではありません。また長年使用している場合も同様にゆるんでくることがあります。
この場合は、再度ネジを締め付けて固定し直すことで、対応可能ですので、それほどびっくりなされず、速やかにご連絡ください。一方、カタカタを放置してしまうと、インプラントやあごの骨まで悪影響を及ぼし、インプラント自体が根本から動いている場合は、最悪インプラント自体を撤去することもありますので、放置せず、速やかにご連絡・ご来院いただくことが特に大切です。
インプラントのネジが緩んでいるのであれば、「なぜ緩んだのか?」を見極めることが重要です。噛み合わせが原因になっているのであれば、同時に噛み合わせも改善しなければ、根本的な解決にはなりません。例えば、強い歯ぎしりや食いしばりを無意識に行っていたりする場合は、カタツキを繰り返すことがあり、その場合は、インプラントや天然歯を守るために、夜間にマウスピースを着けていただくこともあります。また、片側で咬む癖があったり、残っている天然歯に問題があり、インプラントばかりで咬んでいることも、過剰な力のかかりすぎとなりますので、その場合は天然歯の治療が必要となることもあります。
インプラント完成後に「人工歯が欠ける」
インプラントの完成後、しばらくしてから人工歯(上部構造・かぶせ物)が欠けるケースがあります。
天然歯には、歯根と骨の間に「歯根膜」という組織があります。歯根膜はクッションのような働きをしており、噛んだときの衝撃を緩和して私たちの歯を守っています。
一方で、インプラントは人工物ですからこの歯根膜がなく、咬んだときの衝撃がそのまま人工歯やインプラント・あごの骨に伝わります。
先ほどの「ねじのカタツキ」と似ているのですが、咬む衝撃が継続的にインプラントやあごの骨自体に加わり続けないよう、人工歯が欠けるケースがあるのです。この症状もインプラント治療を行う上で、それほど珍しいものではありません。
また、咬み合わせは、ドアの蝶番のような単純な開閉運動ではなく、牛が草をはむときのように「クチャクチャ」と三次元的にとても複雑に動いています。
例えば、川の上流で大きく角ばっていた石が、下流に流されるにつれて、石と石が三次元的に複雑にぶつかり合ううちに、次第に摩擦などにより丸みを帯びて小さくなるように、インプラントの人工歯も、患者様一人ひとりのかみ合わせに適するように、毎日の食事の際に自然に研磨されているともいえます。
その意味で、多少の人工歯の欠け(チッピングといいます)は、インプラントが個々の患者様ののかみ合わせに適合していく過程で起こるものとも言えます。
人工歯が欠けた場合は、欠けた部分を削って丸くしたり、欠けた部分が大きければ被せ物をつくり直したりします。同時に、歯ぎしりや食いしばりのクセがあると、症状を繰り返すことがありますので、就寝時にマウスピースをつけるなど、適切な処置が求められます。