口腔外科
お口の病気
虫歯・歯周病以外でお口の中にできる代表的な病気をいくつかご紹介します。その他のアゴ・お口の様々な病気にも大学口腔外科ドクターが対応いたします。
お口の中で何か気になることがありましたら、お気軽にご来院ください。
粘液のう胞
粘液のう胞とは
のう胞という病気があるのをご存知ですか。簡単に言えば、「袋」のようなものができる病気です。聞き慣れない名前かも知れませんが、口の中ではそれほど珍しくありません。くちびるなどの粘膜やアゴの骨の中にできることがあります。ここではくちびるの「のう胞」をご紹介します。
くちびるの粘膜が、半月状にぷくっと膨れる場合があります。これは中に唾液がたまり、風船のように膨らむことによって生じたもので、「粘液のう胞」といいます。これは、くちびるの粘膜の下には唾液を分泌する組織「小唾液腺」があり、くちびるを噛んでしまって小唾液腺が傷つくと、唾液が正常に分泌されず粘膜の下で溜まってしまうために生じるものです。
粘液のう胞の特徴
粘液のう胞は直径5mm前後の半月状の粘膜の膨らみで、粘膜と同程度の柔らかさです。色も周囲の粘膜と似た色で、粘膜の表面や周囲には異常が見られません。また、粘膜が傷ついた直後でない限り、痛みもありません。
しかし、何かの拍子にのう胞部分の粘膜が傷つくと、のう胞が破れて中の唾液が出てきます。一旦しぼんで小さくなったのう胞は再び大きくなりますが、自然に治ることはほとんどなく、傷ついた後はしばらく痛む場合もあります。
また、のう胞が何度もつぶれて再び大きくなることを繰り返すと、徐々に表面が硬く白っぽくなります。やがてのう胞が直径1cmほどに成長すると、表面の粘膜は薄く、色は青紫色がかってやや暗くなり、内部が透けて血管が見える場合もあります。
粘液のう胞は小唾液腺がある場所ではどこでもできる可能性があります。とはいってもその多くは下くちびるにでき、それ以外の場所にできることはあまりありません。他の場所に比べて下唇が傷つきやすい場所だからかもしれませんが、その理由ははっきりしていません。
粘液のう胞の治療法
粘液のう胞は破れて(自壊)しぼんでも再発するため、手術での摘出が原則です。手術は、局所麻酔下で粘膜を切開してのう胞を摘出しますが、のう胞付近にあるいくつかの小唾液腺も同時に摘出します。最後に傷口を縫合し、通常は1週間程度で抜糸を行います。
また、手術の所要時間は麻酔が効くまでに5分、加えて手術が10分程度となります。術後は傷口から多少の出血が見られますが、痛みはほとんどありません。一方、腫れは多かれ少なかれ必ず起こり、引くまでに数日間を必要とします。
①粘液のう胞があります
③なるべくひと塊で取り出します
②マーキングして粘膜を切っていきます
④取り残しがないようにします
がま腫
がま腫とは
がま腫の治療法
がま腫
舌下腺とともに摘出しました
口腔白板症
口腔白板症とは
口腔白板症(はくばんしょう)とは、「お口に生じて、拭いても取れない白色の板状(いたのように拡がる)あるいは斑状(つぶつぶに拡がる)の変化で、他の病気とは区別されるような白い病変」と定義されています。
口腔白板症はガンになる一歩手前の状態(前癌病変)であると考えられ、その癌化率は4.4~17.5%と報告されています。
特に舌の横、舌の下、に発生した白板症で、イボ状の形やただれ(潰瘍)が存在するときには口腔ガンに進展する確率が高く、すでにガンを発生している場合があります。
口腔白板症の原因
口腔白板症の病因ははっきりしていませんが、
●合わない歯のかぶせ物や入れ歯などによる慢性の機械的刺激
●タバコ、アルコール飲料、刺激性食品などの化学的刺激
などがあげられています。
口腔白板症は40歳以降の男性に多くみられます。好発部位は舌で、ついで歯ぐき、頬の粘膜、上顎の粘膜、舌の下などが続きます。発生頻度は日本では、2.4%との報告があります。
口腔白板症の診断
口腔白板症の診断には切り取った組織の採取による顕微鏡組織検査(病理検査)が必要です。
口腔白板症の病理組織像は多彩ですが、特にガン化との関連性においては病理組織学的診断による細胞の形の不規則な程度の診断は重要になります。
口腔白板症の治療
治療としては、まず刺激源になっているものがあれば、除去します。薬物療法としては、ビタミンAが有効でビタミンAの投与に反応するか否かを観察します。なお口腔白板症で広範囲に病変が存在する場合、生検組織を複数の部位より採取する必要があります。生検を行い、上皮異形成と診断される病変があり、またビタミンAによる治療に反応しなければ病変粘膜の外科的切除(手術で取り除く)を行います。また生検にて上皮内癌という結果が得られた場合は口腔扁平上皮癌として取り扱うことになります。
歯根のう胞
歯根のう胞とは
むし歯や打撲などで、歯の神経が死んでしまい、感染すると、歯の根の先端に小さな風船のようなものができます。俗にいう「膿(ウミ)の袋」(のう胞)です。
ウミの正体は、死んだ歯の細胞や、戦って討ち死にした細菌と白血球などが溶けたものです。そして徐々にウミは大きくなり、周囲の骨を溶かしてウミの出口を作ります。この時、歯の根の部分の歯ぐきが腫れ、「ニキビ」のようなふくらみができます。
X線写真では、根の先の黒い影として写り、強い自覚症状はありませんが、少しずつ大きくなる場合や、時々感染して腫れたりすることもあります。
放置しておくと、どんどんウミの袋が大きくなっていき、歯がグラグラしてしたり、隣の歯の根にまで到達して隣の歯の神経も死んでしまうこともあります。
よって、症状がなくても早めの治療が必要となります。
治療法としては、歯の根の治療(根管治療)で、歯の神経のあった空洞(歯髄腔)をきれいに掃除するのが一般的です。ただ、ウミが大きいと根の治療だけでは難しい場合もあり、のう胞を摘出すると同時に歯の根の先端をカットする小手術(歯根端切除術)や、やむなく抜歯に至ることもあります。
歯根端切除術とは
歯の根が曲がっているなどで根管治療ができなかったり、 予後が不良な場合や、かぶせた冠や根管のつめものが除去できない場合にはに「歯根端切除術」を行います。
歯ぐきを切開し、アゴの骨に小さな穴を開けて直接ウミの袋を取り除き、マイクロミラーで原因を究明し、原因である歯根の端を1から2mm切断します。
そして超音波ダイヤモンドチップで根の先に小さな穴を形成した後、安全性の高い接着性セメントを流し込み細菌の繁殖部を閉鎖、歯ぐきをもどして縫います.
必要によって、治りがよくなるように骨の代わりとなる材料(骨補填材)などを入れることもあります。手術時間は約1時間です。
手術後、ウミがあった空洞は自然と血液で満たされ、数か月をかけて徐々に骨に置き換わっていきます。
予後について、当科の手術成功率は80%以上で良好です. 再発はまれにありますが、その原因は歯根そのものが腐っている場合や、歯根に亀裂や破折がある場合などです.
予後をチェックして抜歯にならないために、手術の1、2、3年後に経過観察のため来院していただきます。病巣の再発がないか、歯根のまわりに正常の骨が再生されているかなどをチェックします。当科では可能な限り根管治療を優先し、不可能や予後不良の場合にのみ歯根端切除術を行います。
お気軽にお電話ください。
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