⑤笑気吸入鎮静法でリラックス
笑気吸入鎮静法はご存じでしょうか?フワワ~っと良い気分になる体に優しい麻酔です。
笑気吸入鎮静法 を積極的に取り入れています
笑気吸入鎮静法とは
酸素にほんのり甘い香りがする笑気という気体を混ぜて、鼻から吸ってもらう方法で、吸入中は、歯を削るなどの不快な振動や注射の痛みもあまり気にならなくなり、ゆったりした楽な気分で時間のたつこともわすれて治療を受けていただくことができます。
また、点滴等で鎮静剤を血液内に入れる方法(静脈内鎮静法といいます)と比べると、ガス濃度の調節がとても簡単で、吸入を止めれば、すぐに元の状態に戻るので安全です。桜川市の歯医者では笑気を導入しているのは当科のみです。
この笑気鎮静法も「リラックス無痛治療」の取り組みには欠かせないものです。
笑気と酸素のはたらき
●低濃度(30%)の笑気の作用
鎮静作用により血圧や脈拍を安定させます
●高濃度(70%)の酸素の作用
全身への酸素量を増やし、心臓や脳を守ります
おすすめしたい患者様
笑気吸入鎮静法はすべての患者様に適応となりますが、特に、治療に対して恐怖心や不安感をもっていて、緊張しやすい方におすすめしています。
また、血圧の高い方や心臓に病気を持っている方、小児やご高齢の方、口の中を触れると吐き気を催しやすい方等にもおすすめしています。
実際のやり方
鼻の穴にチューブを入れて笑気と酸素を混ぜた気体を鼻から吸い込むだけです。吸入中は、ゆったりした楽な気分になり、痛みもあまり気にならなくなります。
治療の終了後、吸入を止めてチューブを外して約10分後に、元の状態に戻ってから帰宅していただきます。
笑気吸入鎮静法の歴史
全身麻酔に欠かせない笑気ガス 。
濃度を自由に調整できる笑気ガスは、安全な麻酔ガスとして、最もポピュラーな存在です。
酸素と並んで、医療ガスとしてよく知られているのが、笑気ガス(亜酸化窒素・N2O)。変わった呼び名ですが、実際、人がこのガスを吸うと、顔面が弛緩し、まるで笑っているように見えるのです。
このガスを手術の麻酔に初めて使用したのは、アメリカの歯科医、ホーレス・ウエルズ。1884年に、彼は自分が歯を抜く手術をこの笑気ガスを使って公開で行ない、麻酔効果があることを実証しました。つまり、麻酔用ガスとして約130年もの歴史があるわけですが、外科手術に本格的に利用され始めたのは、それからずいぶん後、第二次世界大戦後のことです。それまでは、エーテルやクロロホルムがむしろ主流だったのですが、これらが極めて強い麻酔効果があるのに対し、酸素との混合により、麻酔の程度を自由に変えられる点で笑気ガスが見直されたのです。現在では、外科用の全身吸入麻酔から、産婦人科、歯科、また、手術後の疼痛緩和、救急外来などまで、幅広く利用されており、麻酔といえば笑気ガスというほど一般化した存在となっています。
笑気吸入鎮静法の注意点
お車の運転はガスが完全に抜けてから
吸入鎮静法は、意識を失わせない程度に吸入麻酔薬を鼻マスクから吸入させる方法です。通常は、20~30%の低濃度笑気を70~80%の酸素とともに吸入させます。
今日では、吸入鎮静法では、すべて笑気のみ使用されています。
笑気吸入鎮静法がわが国に導入紹介されたのは、昭和47年から48年頃で(雨宮、久保田、金子、高北らが鎮静法を日本に紹介)、当時は、笑気アナルゲジア(笑気無痛法)と呼ばれていました。それというのも1940年代から1960年代にかけて、アメリカではランガおよびモーンハイムら、デンマークではルーベンら 一部の人々が積極的に笑気アナルゲジアを実施していたのです。
本法が、日本に導入された当初、多くの(あるいは一部の)歯科医は、アナルゲジア(無痛)という言葉にまどわされて、無痛的にすべての歯科治療が行なえると誤解してしまったのです。当時は無痛法とか、迷もう麻酔とか訳されていました。(高濃度の笑気を吸入し、意識がもうろうとしている間に、痛みを与えず処置を行なう方法。)したがって痛みを伴う歯科治療(たとえば抜歯や抜髄)にも局所麻酔を併用しようとせずに、無痛を得ようとして、つい笑気濃度を上げてしまったのです。
その結果、高濃度の笑気を患者に吸入させることになり、患者の意識を消失させてしまったり、あるいは意識を消失させないまでも非常に不快な気分にさせてしまったのです。たとえば80%以上の笑気を吸入させたとしても、笑気は麻酔作用がきわめて弱いので、抜歯などの処置では、痛みを完全におさえることは不可能(かなりの鎮痛作用はありますが)ですし、低酸素状態となって、(空気中には、約20%の酸素と80%の窒素ガスがある)チアノーゼが出現したりして、生命の危険が高まります。痛みに対しては、笑気の吸入で取り除くのではなくて、局所麻酔を使用すべきなのです。
以上のような経験からアナルゲジア(無痛)という言葉を使用するのは問題であると考えられるようになり、1968年、ランガはrelative analgesiaを提唱しました。
一方、モーンハイムは20~40%の低濃度の笑気吸入では完全な無痛は得られないことからanalgesiaという用語は適当ではなくhypoalgesiaという用語を提唱しました。1972年(昭和47年)、モーンハイムの弟子のべネットは、笑気吸入による方法は、鎮静を主目的とするためconsious sedationという用語を提唱し、同年に、米国歯科医師会は吸入鎮静法および静脈内鎮静法を含めた鎮静法をpsychosedationが適当と発表しました。
このような経過からわが国でも精神鎮静法という表現をするようになり、笑気吸入鎮静法(inhalation sedation with nitrous oxide and oxygen)という言葉が用いられています。つまり、現在では、笑気の吸入によって無痛を得ることではなく、低濃度の笑気を吸入させることにより、多少の鎮痛効果(副産物として得られる)と患者の緊張を軽減し、気分の良い状態にさせることを主目的と考えています。
前述しましたように、笑気は古くから存在する麻酔剤であり、その麻酔作用はきわめて弱く、かつ、副作用がほとんどありません。低濃度の笑気を吸入しても、生理的機能の抑制はほとんどなく、安全性のきわめて高いものです。
本法を紹介する書によっては、笑気吸入鎮静法を施行するについては、全身麻酔のトレーニングが必須であると書かれたものがありますが、私は、使い方を誤らない限り、歯学の教育を受けた人ならすべての歯科医が使用してさしつかえないと考えています。その理由の一つは麻酔作用がきわめて弱く、副作用がほとんどない安全なものだからで、そのため現在でも、使用されているのです。
もう一つの理由は、機器の進歩です。現在では、すべての笑気吸入器において、最高50%あるいは機種によっては70%以上の笑気が流出しないようになっています。(したがって患者は30~50%の酸素を吸入することになり、空気中の酸素よりも高濃度の酸素を吸入していることになります。手術後、酸素テントに入っている時と同じくらいの酸素を吸入しています。ちなみに、英国では救急車に50%笑気、50%酸素ボンベが積まれており、トレーニングを受けた消防士が心筋梗塞の患者などに車中でこれを吸入させて病院に移送しているそうです。)
一方、もし酸素ボンベが空になったりすると100%笑気を吸入することになり、その結果、無酸素状態となり生命の危険性が高まりますが、そのような場合、機器が作動して、酸素が流れなくなると、笑気も流れないようになっています。(昭和40年代は、まだ現在のように機器が改善されていませんでしたので、無酸素状態で植物人間になったり、死亡したケースもあったそうです。)もし仮に100%機器を信用できないとしたら、全身麻酔のトレーニングを受けたか否かによって、患者に対する対処の仕方は大きく異なりますので、専門医の方がはるかに安全なのは、言うまでもありません。
さて、そろそろ終わりにしますが、最後に私の主張したいことがあります。それは、「低濃度笑気の吸入による効果は鎮静作用なのか」という点です。「鎮静」という言葉を辞書で引くと「しずまり落ち着くこと」とあります。
笑気の吸入を体験された方はすでに理解されていると思いますが、笑気吸入の効果は前述の1844年の「笑気ガス楽しみ会」にあるような「一種の愉悦的なもの」だと私は思っています。英語ではこのような気分をユーホリックというそうです。今風に言えば、お酒に酔って、多少理性を抑制した「ハイ」になった状態に近いと言えると思います。歯科治療を前提にした笑気の吸入と、教育的あるいは経験としての笑気の吸入は多少異なるものと思っていますが、私が長年、臨床実習で学生に笑気吸入鎮静法として笑気の吸入を教育してきた中で「麻薬よりもいい」と言った学生が何人かいました。つまり私は「笑気吸入鎮静法」という用語は適当ではなく、単純に「笑気吸入法」と称した方が都合が良いと考えています。このように考えると、笑気の吸入法を理解しやすいのです。
笑気の吸入は、むしろお酒を飲んだ時の「気分」に近いと思えます。もちろん笑気とお酒はまったく異なりますが、人によって、お酒も気分が悪くなるので「飲めない」人がいるのと同様に、笑気を吸入すると「気分が悪くなる」人が5人に1人あるいは10人に1人必ずいます。このような人には、ムリして笑気を吸入させることはしません。別の方法を考えればいいのです。私の経験ではお酒を飲めない人はたいてい笑気の吸入をいやがります。反対にお酒の好きな人は笑気の吸入を喜びます。(でも、中には例外もいて、私の妻などはお酒を全く飲めませんが笑気の吸入を好みます。)
以上のことから、当院では、「笑気吸入法」という言葉を用いるようにしています。前述したように笑気の「鎮痛効果」を考慮すると、むしろ「笑気鎮痛法」と表現したいとさえ私は思っています。
笑気は吸入後2~3分すると「効いて」きます。濃度を一定にしていますので、そのままの気分が持続します。鼻から吸って鼻から呼出します。つまり、肺の中で血中に移行するのですが、吸入を止めれば笑気は再び肺から体外に排泄されるので、数分経過すればほとんど醒めます。(文献によれば、吸入を止めて30分後で80%以上排出されますので、帰宅には車を運転しても大丈夫です。)
お車の運転はガスが完全に抜けてからセキムラ
Ⅰ.安心して治療を受けていただくために
笑気吸入鎮静法のメリット 患者さん編
笑気は鎮静作用に加えて鎮痛作用を持っています。つまり笑気吸入鎮静法を用いればリラックスすると共に痛みを感じにくくもなります。
笑気を吸入させながら局所麻酔を行うと、「痛みをとるための麻酔が痛い」というジレンマが軽減されます。
笑気吸入鎮静法のメリット ドクター編
気分が悪くなったり血圧が上昇したり・・といった全身的な不快事項のほとんどは不安感や恐怖心が原因です。笑気吸入鎮静法はこれらのストレスを和らげ、さらに高濃度(70%以上)の酸素を一緒に投与するので治療の安全性を高めます。
Ⅱ.精神鎮静法の基礎知識
笑気の特徴は?
①弱い鎮静・睡眠作用と鎮痛作用があります。
笑気は正式には亜酸化窒素(N2O)といい、吸入麻酔薬の一種です。鎮静・睡眠作用と鎮痛作用を合わせて麻酔作用と呼びますが、笑気は弱い鎮静・睡眠作用と鎮静・睡眠作用と鎮静作用を持っているところが特徴です。従って、単独で全身麻酔を行うことはできません。
②効果の発現と消失は極めて速やかです。吸入させると速やかに効果を表し、中止すれば直ちに排泄されるという性質を持っています。吸入中止後数分で帰宅可能となるのはこのためです。
③呼吸器や循環器にほとんど影響を与えません。
肺や心臓に障害を持っている患者さんにも安全に使用できます。
④肝臓には負担をかけません。
多くの薬剤は代謝に際して肝臓で分解され、その結果生じた分解産物の薬理作用についても注意が必要になりますが、笑気は体内でほとんど分解されません。
笑気吸入鎮静法の安全性は?
笑気が麻酔薬として広く用いられるのは、適度な鎮静作用と強い鎮痛作用を持ち、効果の発現と消失が速やかで、重要臓器に影響を及ぼさないためです。
鎮静法ではこれからの優れた特徴を持つ笑気を30%以下という低い濃度で(全身麻酔で投与する場合は50%-70%)、鼻呼吸により(いつでも口呼吸)70%以上の酸素とともに(空気中の酸素濃度は約21%)吸入させる極めて安全性の高い方法です。
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